現代美術作家・山口晃さんのエッセイ漫画集。
NHK「たけしアート☆ビート」でタケシと並んでコメントする姿に「タモリ倶楽部」空耳アワーのイメージを重ねた。
(でも、たけし&宮田学長=タモリ&安斉肇かな?)
含蓄と審美眼を備えた雰囲気をまといながら、飄々とした存在感。
そんな山口さんのキャラクターをとっくりと味わえる本。
この本の大部分を締める「UP版 すずしろ日記」は東大の機関誌に連載されたエッセイ漫画。
各話1ページだが、1ページに27コマという細密な書き込みと、下書き無しの気軽なタッチ。
話の内容も下書き無しらしく、途中で「由無し事はほどほどにして、話をかえてしまうと」なんて事も。
が、その為にかえって作者の意識と無意識の狭間を漂っている「なにか」を克明に表しているようにも思える。
「なにか」は実際問題どうでもいいことにも思えるのだが、「なにか」はひとの生き方の根っこに深く繋がる問題にも思えて聞き捨てならない。
しかし、そんな著者に天敵が…?
ほぼ毎回、著者と奥様のやりとりが挿入されるのだが、なんとなく夏目漱石の「我輩は猫である」を思い出す。
古風な言い回しや旧かな使い、それに加えて由無し事を思い悩む著者に、奥様が現実的発言をピシャリ、の顛末。
それが絶妙におかしく、時に微笑ましい。
エッセイ以外に「慶派マンガ」や「若沖すごろく」など美術ファンのツボを突く逸品も収録。
「おとうちゃん、やったなー!」「アホ、「社長」よばんかい!」なんてベタな小技も効いてます。
美術家がかく漫画なんてスカした代物かも…と実を言うと期待せずに読んだのだが、それを逆手にとる手法にもやられた。
本文を読むと長年のラジオリスナーであるらしく、ネタとオチを仕込むのがならい性になっているもよう。
これはこの本に関する枝葉末節の事柄であるが、彼の選択眼は理屈でなく反射に近いと感じて大いに共感した。