たまたま東工大という大学の組織像に興味があったので、手に取り、あっという間に読んでしまった。
ただ私は途中まで、てっきり「モーレツ天才助教授」は、著者自身の若かりし頃の話なのかと思ってしまっていた。
著者のもとに現れる、奇才、若き研究者の白川氏が当の主人公であることがわかってきて、副題の「悲劇」が予想されるところが残念だった。この副題(更に帯も)は余計だった。
同じ大学人として本書を読むと、そうだよなぁ、と言う大学共通の部分と、東工大、あるいは特定の学部・専門、特有のものとして「ええっ?!」と驚く部分とがあった。
ま、しかし、さすがに東工大。東大ほどとは記載されながらも、普通から見ると随分恵まれてるし、著者も含め登場する大学人の言動には、一般的な人物像としてはかなり鼻持ちならない印象もなくはない。
才能に恵まれた若き研究者と、精魂込めて立ち上げた組織を失ったことへの鎮魂歌の部分が多くなった後半は、ちょっとしんどい。
一方、前半部分の(著者自身も含め)みな、まだ若い頃の動きは活気があって、とても面白い。研究者でない人たちに、全うで熱心な大学研究者がどれほどに、自分の人生を「研究」に捧げているかがわかって頂けるだろう。その姿は、ほとんど狂気に近いが、一方で、だからこそ「先生」であり、だからこそ世界に悟し、だからこそ未知なるものを解明し、創造してくれるのか、と感動をおぼえる。
ただ、この本は、とどのつまり誰が読むことを想定された本なんだろうか。
故白川氏を偲ぶ人向け。彼と著者らが先端を切ってきた金融工学に興味を持つ人たち向けなのか。
私としては、大学と言うところとそこに住まう大学人の「日常」を、多くの一般の皆さんに知って頂きたい。
良いところも、悪い(あるいは思いっきり俗的な)ところも、この本からは知ることができるのではないかと思う(あくまで、東工大というかなり恵まれた、都会の大学、と言う限界はあるけれど)。