■北九州市に住む滝川亮は地元の私立大学4年生で父親と二人暮らし。就職の当ても無く、卒業もきわどい有様だ。亮はかつて東京に居たが、父親が事業に失敗し中学のとき父の実家がある北九州市にきたのだった。父はタクシー運転手をし苦労して息子を大学にやったが、無目的に日々を過ごす亮との仲はよくない■ある日亮は、悪友の翔平と和也にそそのかされて、繁華街のクラブの金庫の大麻をくすねる。やくざに追われ逃げ込んだバーで、亮は速水という男に助けられる。速水は小さなやくざ組織速水総業の組長だった。ひょんな出会いから、亮は速水総業に出入りし、19歳の下っ端組員・松原にパソコンを教える羽目になる■速水総業には、ほかに武闘派の若頭・武石、風俗担当の若頭補佐・目黒、債権取立て専門の尾崎がいた。速水総業は任侠道を律儀に守ろうとする古い体質の集団だった■やがて友人の和也が自分を速水の配下だと虚勢を張って事件をおこし、それが発端で速水総業は、対立組織仁龍会との凄惨な抗争に突入してゆくことになる。世話になった速水を助けようと真剣に苦悩し、もがく亮――。物語は父と子の対立と和解を織り交ぜつつハイスピードで展開する■アウトローの世界を描きながら何故か哀感切々たるものが心の奥底から吹き上げてくる。見事な青春小説である。