宗教美術だけではなく、ムスリムの関係する世俗的な美術品をも含めた
「イスラーム美術」について、建築、写本美術、工芸の3つのジャンルから
俯瞰することを目指した入門書になります。
まずイスラームの信仰について勃興と現在の広がりについて基本的事項を
説明し、よく知られる特徴である偶像崇拝禁止によって植物・幾何学・文字の
各文様が高度に発達を遂げ、その変遷を時代と地域に分けて伝播していく様を
解説することを導入部としています。
第1章は、緻密な装飾モチーフを壁面と天井に施された装飾や美麗な
空間を配したモスクを中心に寄宿学校(マドラサ)や聖人・王族の墓廟、
そしてトプカプやアルハンブラ宮殿などについて豊富な写真と共に
時代背景などに迫りながら建物の見所が述べられています。
第2章の写本芸術では、聖典コーランをはじめ、物語や叙事詩、科学書などの
豪華な素材を使用して微細な細工が施された装丁を持つ写本書物、そして、
神の言葉たるコーランを書き写す使命をもち高い地位を持つ芸術家である書家、
その手になるアラビア書道による書画について、注目すべき特徴が披露されています。
第3章では、多様な意匠に支えられた儀礼具や日用品の数々、特に陶器、
ガラス器から華麗な文様で紡がれた絨毯まで、東西交易の影響を受けながら
発達したイスラームの工芸品について紹介されています。
本書ではイスラームの用語がそのまま用いている場合が多いため、巻末に
まとめられている用語解説を参考にしながら、イスラームの美という文化に
触れるというのがよいのではないかと思います。