一言でいうと江國版不思議の国のアリス?誰もが持っているけれど忘れ去られてしまっている幼き頃の不思議な出来事や出会い。この本は江國独特の感性が細部にまで散りばめられた世界の中でそれらがアレンジされて描かれた短編集。その一つ一つは単なる物語なのではなく、僕らの幼い記憶を引き出す不思議な磁石のよう。読者は目の前の物語と自身の思ひ出が同時並行していく愉しみを存分に味わえる。自身の幼き頃。それは例えば小学校の砂場でやったすもう取り、学校裏の神社を好き勝手に歩いたかくれんぼ、毎年一番の楽しみだった町の夏祭りとボンボンキャンデー。それらは懐かしいの一言では括りきれない大切な瞬間の連続であったことを江國はこの小説で教えてくれる。