とても読みやすかった。物語がいきなり老人の部屋を訪ねる場面からはじまるので、展開がスムーズで
あり、なおかつ物語を構築するすべての具財が難なくすんなりと読み手に伝わる工夫もされている。 老
人の過去を知る人物を訪ねてゆくと、一様にみなが固く口を閉ざす。いったい彼の過去に何があったの
か?老人の残したノートに書かれていた奇妙な詩みたいなものが意味するものは何なのか?門川青年が事
の真相を究明する過程が読みどころであり、その部分にリアリティがなければ興醒めなのだが、本書はそ
の部分もなんとかクリアしていて無理がなかった。真相部分はある程度予想ができてしまうのだが、その
意味がラストで反転する構成もなかなかよかったと思う。全体の印象としては小粒なのだが、読後おとず
れる温かい気持ちがうれしかった。