普段暮らしを着物で通し,喧嘩っ早くて女に疎い。ある日,そんな男のもとに悩める仲間が押しかける。落語の稽古をつけてはみるも,仕事に恋に落ち込んで,教えるどころの騒ぎじゃない。26歳の二ツ目噺家・今昔亭三つ葉をめぐる,奮闘の物語。
結論から言うと,各人の悩みが解消されたとは言い難い。それでも,何かが少し変わっていて,前向きに生きていこうという兆しが見える。これまで読んだ作家に例えるなら,重松清的な読後感を,荻原浩風の楽しいキャラ立てと,松樹剛史風の淡い恋愛描写で描き出した,という印象です。ラストがやや安直な気もするけど,大きな問題ではありません。
プロセスに掛ける情熱が,この物語の良さかな。とりわけ上方落語を必死に覚える村林少年と,人に教える傍ら,自らも師匠の十八番に挑戦する三つ葉には,応援する言葉のひとつも掛けたくなります。クライマックスの高座シーンは,自分も客席に居る気分になれます。