レビューも一応は簡潔な批評になるわけで時に辛くもなります。その意味でこの本はやや問題あり。筆者の10年に及ぶ英国での生活、仕事体験がベースになっていますが、「ネオ階級社会」とは何か、という本題に関する記述は少なく、イージーで、いまの日本がアメリカ型の競争社会ではなく英国型の階級社会化に変わりつつある、というのですが、それは疑問です。中流とはなにかという定義にもよりますが、所得的にも、資産的にも中間層でしょう。相続税が安い英国の中流の資産と日本の「中流、もしくは中くらい意識の層」とは比較にならないのでは。筆者の体験にもとづく英国の階級社会の実態やロンドンの日本人村のひどさはその通りで、同感です。しかし、それとこの本の主題とはあまり関係ない。日本がこの7~8年で様変わりし、米国型の競争原理の導入と合理化、工場の海外移転などにより、階層化が急速に進んでいることは事実でしょう。若者は貧乏になり、メインターゲットでもなくなり、フリーターやパートさらに派遣社員、請負会社などにより、安い賃金で働き、キャリアにもならず、低賃金労働者として固定化されつつあることも事実です。だからといって、日本が英国社会の模倣?として悪しき「ネオ階級社会」に向かっているとはあまりに短絡的で、説得力がありません。大体「ネオ階級社会とは何か」という定義すらあいまいです。キャッチーなタイトルで売らんかなという感じさえします。こういう問題を考える時は、もっと地道な研究、検証が必要でしょう。私も日本の社会は今後よほどの改革をしないと5年後くらいには相当ひどい社会になっていると思いますが、それだけにこうしたテーマにはもっと真摯に取り組んで欲しい。