オゾン監督作ですから、人間関係のもつれなんかはあるんですが、全く重苦しくなくてイヤミがない。ミュージカルではないものの、2002年の「8人の女たち」の雰囲気がありますね。ちょっとネタバレですが、ラストに、カトリーヌ・ドヌーブが歌っちゃうサービスもあります。これには、ちょっと驚きました。(笑)
ドヌーブはホント凄い女優ですよ。1943年生まれのこの大女優、ずいぶん太っちゃいましたが、相変わらず美しくオーラが漂う。それで、ジャージ姿で走り回るコケティッシュな役もやっちゃう。(笑)
ブルジョア主婦ならではのおおらかさで、ストライキで息まく労働者たちをなだめ、芸術家志望の息子ローランに傘のデザインをまかせて雨傘工場を見る見る立て直していくプロセスは、メチャメチャ楽観的。亭主の浮気相手の秘書までも正妻スザンヌの魅力の虜になってしまうのだから可笑しい。
そして、ストーリーは、意外にも先読みを許さない展開で、労働者階級出身の市長とスザンヌの過去の関係に驚くのは序の口。ローランの出生の秘密や、工場経営者からなんと政治の世界へと踏み出す、飛躍した展開は、ミュージカルも顔負けのハイテンポ。
70年代を背景したことで、フェミニズムへの気配りをチラリと見せるあたりもオゾン監督らしい。
邦題は「しあわせの雨傘」となっていますが、ヌーヴ主演の「シェルブールの雨傘」にひっかけて付けたのでしょう。原題は「Potiche ポティシュ」で、実用性のない豪華な花瓶・壺」のこと。美しいだけで役に立たない女性をたとえる皮肉っぽい言葉でもあるそうです。
でも、その蔑視した言葉が、ラスト、素晴らしい意味に変化します。ただのお飾りだった妻が社会に羽ばたく、これぞ大人の人生賛歌。