長編デビュー作『ハイ・アート』で新人離れした素晴らしい映画を作ってみせたチョロデンコ。
2作目も低予算のインディーズ体制ながら、見事な仕上がり。
彼女の特質は繊細な感受性で、画面自体が豊かに映画を物語る。
冒頭、映画の舞台となる家にまで観客を連れていくシークエンスは、
ともすると退屈な説明口調になるものだが、
キューブリックの『シャイニング』に勝るとも劣らない導入部。
彼女の美点である音楽とのマッチングも生きている。
『ハイ・アート』でもそうだったが、彼女は音楽の使い方が非常にうまい。
画面に気持ち良く音楽が寄り添い、それを味わうだけでも彼女の映画を見る価値がある。
画面はいつでもひきしまり、余計なカットがなく、
MTVもどきの馬鹿げた編集がいっさいない。
役者も監督の演出力に応じて的確に存在感を示す。
特にケイト・ベッキンセールは、その役柄の本質を体現して微妙な心理の揺れを演じていく。
この監督は、女性同士の愛情表現を描かせたら、右に出るものはいないんじゃないのか。
(今回の作品でもプールの中のキスシーンという素晴らしい場面がある)。
しかし「リサ作品」にはいつも悲劇がつきまとう。
内容が極めて微妙で繊細なだけに、分かりやすく説明することが難しい。
いつも日本におけるタイトルが問題になる。
今回も女性誌に取り上げられやすいような苦心が露骨に表れている。
映画を見れば分かるが「"幸せになる法則”などない」というのが基本の前提なのだ。
『LAUREL CANYON』という映画を『しあわせの法則』と呼ばなくてはならない不幸。
『ハイ・アート』に至っては、DVD発売時に妙ちくりんなタイトルに変えられ、
DVDの存在自体が瀕死の重症になっている
(公開時のポスター、フライヤーなどのグラフィックはとても優れていたのに)。
彼女の映画のような上質作品が、まっとうに支持されるようになると、
じつに素晴らしいと思う。