参平の妻、鶴子が事故死した後に遺した家事ノート。いままで家事を
することのなかった参平は、鶴子(案の定、参平は「おつう」と呼び
かける)からの「おくりもの」を使って家事をする。
それによって参平は、同居することになった息子夫婦と孫娘に「おく
りもの」をする。家族とはこのように無償の愛をやりとりするものだ、
と、作者は喝破している。
1巻とは対照的に、この巻では登場人物がダイナミックに行動する。
孫娘の乃奈は恋をする。主人公の参平と若い女性仙川の関係はぐっ
と近づく。そして息子夫婦は……。
こうの史代作品としては驚くほどきわどいテーマも扱いつつ、それで
も安定して読ませるのは、この作品が冒頭に挙げたようなきっちりと
した世界の構築をもっているからに他ならない。ノートを狂言回しに
する巧みな構成で、家事を通して市井の人のささやかな幸せと悩み、
世代を超えての受け継ぎという「愛」のテーマ、そして2巻では成長
と旅立ちを加え――すなわち「生きる」というテーマを、これほどの
画力と構成で見せ、しかも笑わせながら見せる漫画家を他に知らない。
また、男やもめの参平のセクシャルな面を、仙川とのエピソードで
引き出しているのも見逃せない。仙川を鶴子の生まれ変わりのように
見せたり、そう見せなかったり。芝居のメフィストのように振る舞わ
せることで、生臭さを消しているのは、いかにもこうの作品である。
こうの史代は、『夕凪の街 桜の国』以上のスケールをもつ作品を、
日常のミクロの視点からいくらでも描ける作家であることを証明して
見せた。これは金字塔的作品である。感想文が固くて申し訳ない。