私は琵琶を演奏しており、鶴田錦史さんのノンフィクション小説を取材している方がいることは、噂で10年ほど前から知っていました。
この作品がこのたび受賞され、作品となったので早速手に取り読みました。
鶴田流を作った人、鶴田錦史のノンフィクション。
彼女の周囲には琵琶界アイドル水藤錦穣、琵琶界フィクサー水藤枝水がいた。彼らなしには鶴田錦史が大きく羽ばたけなかったのではないかと思います。
ここらへんの隠れた状況は琵琶人ならば当然知っているけども公に口にしない事柄でした。
なので、今回発刊されたことで「ここまで言ってしまったかー!」とも思いましたが、それに対しては誰も嘘だとは言わない。
つまり、本当だったのだな、と改めて思いました。
琵琶の演奏家とはかかわりのない作者の方が、ここまでよく取材されていると感じました。
少なくとも、書かれていることに嘘はなく、関係者から集めた資料、聞き書きによる直接取材を中心に据えられているので改めて「そうだったのか」と
思わされるところが多かったです。
超人気女流琵琶演奏家として幼い時から華やかな舞台を作りながらも最後は借金生活でも琵琶一筋を貫いた水藤錦穣。
女としての人生、生まれた子供まで捨て、一度は琵琶も捨てた鶴田錦史。最後は金に物を言わせて?琵琶界に復活し、世界へ琵琶を知らしめた天才琵琶師。
どっちのあり方がが正しいのかなんて一概に言えない。
ただ、琵琶がこんなにも人の人生の中心に据えられている時代があったのだな、と。
琵琶の演奏家でこれほどドラマティックな人生を歩んでいる人は今はほとんどいないのかもしれません。
というより今は演奏家自体がほとんどいないこの世の中。
琵琶にかかわるものとして、この小説を通じていろんな方がまた「語り」芸の琵琶を聴くきっかけになることを願ってやみません。
作者の方の取材努力、熱意は琵琶人として大きく評価させていただきたいと思います。