読みやすいのに単語の選びかた一つ一つが新鮮で
ほんの些細な日常の物語もひどく印象深いものとして読み手に刻み付けてくる、
そんな確かな力を持った作家さんだと思う。
私は個人的には、読み終えたあとに自分でもどう表現したらいいかわからない感情が
こみ上げてくるものが本物の小説だと思っているのですが(「面白かった」「悲しかった」
「切なかった」等とひと言で表せないもの)、本作の表題作が久々に『それ』だった。
苦笑いしながらも心のどこかがやるせないような。
腹も立つけどこの世の無常さに脱力して泣きたくなるような。
とにかく読後、脳の奥がぞっと痺れた感じになるような物語だった。
久々にいい作家さんに出会えた。
本作は20代半ば〜30代半ばの、大人と子供の境目にいる人に是非読んでほしい。