これと同じ年、アル・パチーノとジーン・ハックマンの『スケアクロウ』が大変話題になりました。オニール父娘の『ペーパームーン』も大ヒットしました。ロード・ムービーの当たり年だったようです(しかし最大のヒット作は閉塞感を壮絶なまでに練り上げた『エクソシスト』でしたが)。目的地があるから旅は成り立つのですが、しかし着いてしまうといずれの物語もみな破堤してしまうのはなぜでしょう。思うにそれは「旅の目的は旅をするということ自身にある」というものだからだと思うのです。
この映画も、旅をしている時の、その緩くかつ限りなく精神的に自由な時間と人間関係がたまらなく良いです。しかしJ.ニコルソンは護送役という現実から抜け出るわけには行かないのです。そのもどかしさ。この映画は見事にニューシネマしています。同じく彼が主演している『イージー・ライダー』や『カッコーの巣の上で』での結末と考えあわせると本当にやりきれない思いが残ります。しかしだからこそ「旅」の持つきらめきが鮮やかに残るのです。そして消えゆく素晴らしさだからこそ真に素晴らしいのだということも。
監督のハル・アシュビーは典型的な70年代の映像作家で、権威・権力からの逃走を描かせたら右に出るものがいません。しかしあまりにも時代に殉じた監督だったとも言えましょう。映画通と言われる人達の間でも忘れられた存在になっています。それはDVD化された映画の数から考えても分かります。その意味でもこのDVD化は英断です。是非この素晴らしき映像作家に再評価を。