どちらかと言うと海外設定の作品が多いオノ・ナツメ氏にとって、日本しかも「時代劇」というテーマを持
つ本作は、新境地を開く為の重要作と位置づけられるだろう。
自分は後追いでオノ氏の他作品を全て読んだ後、一番最後に読み始めた作品であったが、初盤は物
語の展開が過度にスローかつ淡々とし過ぎており、他のオノ作品にある華に欠けるような気がして、本
作の魅力を掴むのに時間がかかった。
しかし「五葉」メンバーの過去が少しづつ明らかになる辺りから物語のテンポが良くなり、前巻からは遂
に「五葉」の頭であり、最も掴みどころの無い男弥一の過去が明らかにされている。一方で弥一の過去
に関わる人物が続々登場し、弥一の周辺が慌ただしくなる辺りからはストーリー自体も緊迫感を増し、
現在はすっかり本作品の虜である。
物語の詳細は実際に読んで頂くとして、本巻では弥一独特の掴みどころの無さがとても脆いもので支
えられていることが分かり、弥一の人間らしさが初めて全開になる劇的なシーンも含まれている。
初めて脆い部分を見せる弥一と対照的なのが、政之助である。当初主人公である彼にはあまり魅力を
感じなかったのだが、「五葉」との関わりで得た、仲間との連帯感や人を守る強さといった「漢らしさ」が
本巻で開花し、新たな魅力を放つ。弟の文之助に、「五葉」が自分にとっての居場所であると静かに諭
す彼は、初盤のおどおどした態度の彼とは別人のように肝が座っている。
初盤からの政之助と弥一の心境の確実な変化を感じ取れる本巻は、本作初の山場となるだろう。
4月からはアニメーション化が控えている模様。五葉のメンバーはもちろん、ご隠居・八木・立花等、脇
を固める人物が実に「立って」いるこの作品、どのように映像化されるのか楽しみに待ちたい。