すでに他の人の書評を読んでしまった後に読み始めたので、
「尾崎俊介」と「かなこ」の関係については、最初からわかっていた。
むしろ、なぜそうなっていくのか、その描写に期待を込めて読んだといってもいい。
人間の業の深さをえぐりだすような作品なのかどうか。
どういう状況で、そんな選択をすると作者は考えるのだろうか?
女性読者としてはすっきりしない読後感だ。
はっきり言って、それほどの深みのある作品ではなかった。
読んだ後にかなり強い「もやもや感」があって、
それを「考えさせられる作品」と表現してもよいのだが、納得がいかないところも多い。
登場人物たちは皆よどんで暑苦しくやりきれない雰囲気を出していて、
さわやかな渓谷の風景描写と対照的なのが、いいのか悪いのか。
変に心に残って「こんな温泉地はいいなぁ」とか思ってしまう。
最後の「かなこ」の行動と俊介の気持ちなどは、「静かな爆弾」と同じで、
描ききることを避けてしまった作者の「逃げ」という気もする。
記者の渡辺の心情をもうちょっと掘り下げて、
男性特有の心理をあぶりだしてくれたら良かったと思う。