コミュニケーション不全なヒロイン,意思の強さとスペックは天井知らずの先輩,二人での逃避行,問答無用で主人公を殴りつける女性教師etc,etc・・・と並べてゆくとかの秋山瑞人さん「イリヤの空,UFOの夏」(電撃文庫)を想起する人もいらっしゃるかもしれません.実際,ミドルティーンの初恋物という点で両者は共通しますし.
ただ,表面的に共通するのはそこまでで,読後感はかなり相違します.かなた「世界の命運に殉ずる少女」という重い命題を突き付け,壮大な空虚感を読者に味あわさせる「イリヤ」.こなた深刻さを抱えつつも仲間と演奏することの達成感を感じることができる「ピアノソナタ」.この際,読み比べてみるのも一興かと思います.
杉井光さんは'06にデビューしこれで早くも3シリーズ目です.これまでも巫女・ニート等を題材に取りつつ,それらへの既成概念に寄り掛かる事無く絶えず独自の視点で描いて来ました.本作でもギターとクラシックと言う意表を突く取り合せが出て来ます.どの様な場面でどの楽曲が用いているかもその楽曲への作者独自の解釈と言え,クラシック好きの方には堪えられないかもしれません.電撃の若手では同期の「狼と香辛料」支倉凍砂さんが有名ですが,杉井さんの作品も要チェックです