小冊子ながら明治以来の日本の農地利用の歴史から、いま起こっている農地利用の無秩序化の実際、そして政権各党の農業政策の評価などが分かり易く解説されている。表題は「さよならニッポン農業」であるが、著者は、決して絶望しているわけではなく、少し手遅れかといいながらも「日本農業の理想像」を提起している。日本の農業問題に関わる人々、或いは興味ある人にとって必読の書といえる。農業問題の論者でも意外と本書に示されているような論点を十分に抑えていないケースもしばしば見受けられる。
本書でいう農業とは、いわゆる耕種農業に限られる。林業や畜水産は含まない。いまの農地問題を遡れば、戦後の「農地改革」に行き着く。日本政府は小作農の自作農化を目的として5ha以下に農地を制限しようとしたが、GHQにより、1ha以下とされた。これでも戦後の食糧難時代にはよかった。しかし経済の高度成長、農産物の輸入自由化の趨勢のなかにあって国際競争力のなさは如何ともしがたいことが明らかとなったが、抜本的な改革が行われなかった。コメについていうと生産者保護のため現在、341円/kgもの関税をかけて輸入を事実上阻止し、そのかわり日本のコメ生産量の10%にもなるミニマムアクセス米)の輸入(当然、その処分)を余儀なくされている。自民党政権下では不十分とはいえ生産性向上のために4ha以上の大規模農家の育成を目指した。しかし、その後の現政権により、コメの戸別所得補償制度が決められた。これは選挙対策用の危うい政策である。生産性の低い生産者への税金による補償により実質消費者価格は国際基準に比べて著しくものとなり、加えてWTOからはOTDS(歪んだ補助金)とみなされ我が国の立国の基盤である自由貿易を危うくする。
さらに著者は「自分の土地をどう使おうが勝手」という風潮が農地利用の無秩序を産んでいることを指摘する。まずは多く人に読んで頂きたい。