ミステリー物、音楽物、青春物―と、この本には色々な要素が詰め込まれているが、
逆に詰め込みすぎて全てが中途半端になっているような感じがした。
ミステリーとしてはトリックが使い古されていて目新しさがない。
推理小説愛読者なら2章で仕掛けに気付くのではないだろうか?
音楽物としても知識・描写が中途半端。
作中取り上げられる作曲家もベートーヴェン、ドビュッシー、ショパンと大家揃いであり、
彼らに関する薀蓄も「そんなの既に知ってるよ」というレベル。
演奏中の描写は中々力が入っているが、どこか白々しいというか
藤本治の『船に乗れ!』に感じたような、演奏描写にグイグイ引き込まれるような感じはない。
青春物としては、他のレビューに書かれているように無駄に説教臭い。
登場人物一人ひとりが折に触れて自分の人生観・現代社会に対する批判を口にするが、
これがかえって登場人物たちの現実味を失わせ、まるで教育ドラマでも見ている気にさせる。
材料だけは盛りだくさんだが、これといって美味いわけでもない料理といった感じ。
腹は(無駄に)膨れるが、満足感は感じない。