タイムマシンを扱ったSF小説や映画は多々ありますが,タイムマシンがなぜ存在しなければならないのかというところまで踏み込んだ作品を読んだのは本書が初めてでした。
本書は「秒読み」と題される章の間に「境界層」と題される章がはさまれるかたちで進行します。
「秒読み」の章は,古生物学者である「わたし」と同僚「クリックス」が恐竜絶滅の謎を解くためタイムマシンで過去へと遡る物語。
クリックスは私の古くからの友人であったが,現在私の元妻とつきあっており,わたしとは性格が正反対だ。当然いろんな場面で意見が対立する。恐竜が跋扈する世界でのとんでもない発見。恐竜絶滅の原因どころか,巨大な恐竜が存在する理由までが明らかにされるのだ。
「境界層」の章では,妻と離婚をしていない時のわたしが自分のPC内に自ら記載した覚えのない日記を発見する。この日記の内容がなんと「秒読み」の章の物語なのである。記載された内容から自分が記載したに違いないが,これは一体どういうことなのか。わたしは妻をクリックスに奪われる運命なのか。その謎を解くためタイムマシンの開発者を訪れるという物語。
ソウヤーのSF小説は見事なエンターテイメントですが「ターミナルエクスペリメント」同様,妻との不仲や父との関係など妙に人間くさいところがあり,これらが物語と密接に関係しているのです。
一つの作品を読み終わると他の作品も読んでみたい,そう思わせるのがソウヤーの魅力です。