はじめて観たときの印象は「なんでこんなに長い映画なのか・・・」とイライラしてしまうほどの、散々たるものだった。
しかしなぜか、その後も繰り返し観たくなる、なんとも言いようのない不思議な魅力を湛えた作品なのである。
数年後に気づいたのは、これは「人生と旅」というテーマがそのまま映画として構築されているからじゃないか、ということ。つまり、人生も旅も、そのほとんどの時間は、「なにもなく、ただ淡々とすぎていくシーンの連続」であるからだ。とびきりのシーンというのは、長い人生でもほんの2,3個あればいいわけで、ヴェンダース映画特有の、この「何の意味もなさそうな、無為な瞬間の連続」こそ、「じつは人生ってそういうことだよね」という味わいを生み出している気がする。
なので、つい普段の生活のなかで、なんでもないようなときに、ふとこの映画のことを思い出してしまうときがある。そのときはじめて、「自分と映画がつながった」という感覚を得ることができる。映画を観るだけじゃなく、日常のなかでその映画作品が自分と結びつくような、そういう存在感をもった映画が自分にとっては『さすらい』だったり、あと『都会のアリス』もその部類に入る。ヴェンダースからはそういう「映画とのつきあい方」を教えてもらった気がする。