たとえば、兄が自殺した家族がどういう思いをしながらその先生きていくのか。
家族それぞれが持つ“自分のせいだ”という罪の意識、恐ろしい程の懊悩とそこから逃れられない苦しみ。
たとえば、事故で足を失い顔に疵を持ち、とても好きだった恋の相手からも捨て去られる悲しみ。
事故のせいだと考えてしまいたがる自分の情けなさ、自分への怒りと自分への絶望。
たとえば、父親が失踪して残された家族はどういう思いでその先の人生を作って行くのか。作ったつもりでも崩れる不安定感。
たとえば、アル中に陥った人の苦悩、その家族全員のそれぞれの苦悩、そこから這い出そうともがく苦しさ。
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これら数々のお話の中の僅か一つでも、自分の問題として行き当たった人なら、
この作り物のお話には全く魅力を感じないでしょう。
傍から他人事として見ている人だけにしか楽しめないお話です。
最後の落ちは、単なるカタルシスを作る為に「犬」を使っただけの、陳腐な結末です。
泣くどころか、バカバカしく腹立たしくなりました。
犬は人間の飾りでも持ち物でもないのですから、この扱いは犬に対しても失礼です。
人生は、こんな、「泣かせようとして作ったお話」のような簡単なものではありませんよ、と
作者に言いたいです。
季節の考証も、作者はもとより編集者にももう少し勉強して欲しいところです。