今だから言えるが、このアルバム「さくら」に収録されたシングル曲は、どれもセールスが伸び悩んだ。敢えて売れ線から外した曲作りであったために、ライトユーザー離れを起こしたと言える。
だが、この「さくら」は決して凡作ではなく、むしろ名盤とされるべき内容であることは、実際に聴いてみるとよく分かると思う。
とにかく、濃い。作り込んである。CDを流しているだけで、このアルバムに対するサザンオールスターズの尋常ではない思い入れが伝わってくる。そしてその濃さゆえに、聴く人を選んでしまうであろう事も、窺い知れるのだ。
変な例えだが、それまで万人向けのビールを作っていた会社が、いきなりマニアックな日本酒を売り出したようなものだ、と私は思っている。渾身の作であるがゆえに、人によっては拒否反応を示してしまったのだ。
最近のサザン(具体的には「TSUNAMI」以降)は、再び万人向けの楽曲作りにシフトチェンジして、現在に至る。今の「明るく楽しいサザン」以外も聞いてみたい人には、ぜひこの「さくら」を聴いていただきたい。最初、「明るく楽しいサザン」とのギャップに戸惑うかもしれない。しかし、繰り返し繰り返し聞いていくうち、サザンのもう一つの顔に魅了されていく。ディープな世界に酔いしれてしまう人は、多いはずだ。
サザンファンとしては勿論5つ星の作品なのだが、必ずしも万人受けするものではないと思うので、星を4つにした。