今回は思わぬ“火事場の馬鹿力”を発揮した空太がアツい。火事場だから熱いのではなく、青春してるなーというアツさである。何せ人でごった返す成田空港でぐっと抱き締めるなんて、どこのメロドラマ?最近あまり見かけないよ?という想いの弾けっぷりである。話のオチとしてはかなりアレレ?な感じの、誰かさんを発端にした巻き込まれ展開ではあったが、これが無ければ空太の爆発も無かった訳で、今後の動向に注目したい。
本巻もまた非凡と平凡の悲哀をたっぷり詰め込んだ1冊だが、比較的分かりやすいテーマでもあった。つまり、あれだけの栄光と名誉が確定的なましろが何故に漫画の世界に飛び込んだか?を、主に空太と今回の実質的なヒロインだった【リタ】の立場から描いている。ましろに対するリタの、隠された本当の思いを背景に、周りから見る「あるべき姿」と、自身が「望む姿」とのギャップである。本当はダークでシリアスな物語が書きたいのにツンデレヒロインのラヴコメが全盛だからと本意を曲げて執筆しなくてはならないラノベ作家にも通ずるところだが、同時に、人に対する羨望が強迫観念に変わる危険をも示している。周りがどうこう言おうが気にも止めず対象にのみ真摯に向き合うもの。自分自身がどこまで満足できるかが大事であり、そこには他者との比較が介在せず、むしろ周りの評価は後から付いてくるものだと述べている。これが分かれば誰も苦労はしないが、事実の1つとしてこのことを龍太郎が指摘する演出がニクい。高校は卒業するためだけのものと割り切り、自ら望んで引きこもり、自身が求める道に脇目もふらず邁進する龍太郎に指摘させることで的を射させている。
本来なら文化祭にゲリラ出演するさくら荘の面々という面白い企画、さくら荘の英知が結集する展開が途中なので、この続きも是非見せてほしいところである。