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さかしま (河出文庫)
 
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さかしま (河出文庫) [文庫]

J.K. ユイスマンス , 渋澤 龍彦
5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 1,155 通常配送無料 詳細
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

三島由紀夫をして“デカダンスの「聖書」”と言わしめた幻の名作が待望の文庫化。ひとつの部屋に閉じこもり、自らの趣味の小宇宙を築き上げた主人公デ・ゼッサントの数奇な生涯。澁澤龍彦が最も気に入っていた翻訳。

内容(「BOOK」データベースより)

「生産」を至上の価値とする社会に敢然と反旗を翻し、自らの「部屋」に小宇宙を築き上げた主人公デ・ゼッサント。渋沢龍彦が最も愛した翻訳が今甦る。

登録情報

  • 文庫: 387ページ
  • 出版社: 河出書房新社 (2002/06)
  • ISBN-10: 4309462219
  • ISBN-13: 978-4309462219
  • 発売日: 2002/06
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 87,356位 (本のベストセラーを見る)
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 紫陽花 VINE™ メンバー
形式:文庫|Amazonが確認した購入
血縁結婚を繰り返した貴族の末裔デ・ゼッサントの生涯に仮託して、作者の思弁を奔放に綴ったもの。大まかには、ゼッサントが美と頽廃の「人工の小宇宙」を築いて行く過程とその末路を描いた作品。「さかしま」とは英語で「Against Nature」、即ち「道理にそむくこと」の意であり、基本的に愚俗を忌み、知性と人工を賛美する内容となっている。訳者は私の好きな澁澤氏で、翻訳臭さを全く感じさせない練達した文章になっている。

城館での孤独な子供時代。世間の人々を全て俗人と見なし、性的放蕩に耽ったイエズス会学校時代。放蕩のため遺産を食い潰し、性的欲望も減退し、フォントネエと言う田舎町で隠遁生活を送る道を選んだ経緯。好みの彩色・書物・絵画・調度類で埋められた隠遁邸。知的詭弁による「本物と変わらぬ幻想の悦楽」の信奉。第三章を通して語られる10世紀以前のラテン文学批評。通常の小説の枠組みを越えた構成である。動植物・宝石・酒・音楽に関する煌く考察は澁澤氏のエッセイの様。第五章の絵画の論考は圧巻で、モロオ「サロメ」・「まぼろし」とロイケン「宗教的迫害」は頽廃と残虐の象徴である。しかし、彼の希求する生活は知的な"修道僧"のものなのである。一方、涜聖の罪を犯した事に自負心・慰安を覚える矛盾。夥しい畸形植物から喚起される梅毒のイメージ。そして、"特殊な善意"なしの自由・思想・健康を否定する精神。第十二章の宗教書論評は日本人には苦しいが、次第に涜聖とサディズムの考察に移行する辺り計算尽くか。「サディズムの魅力=禁断の享楽」なのである。傾倒するボードレールとポーの愛情概念の分析も読ませる。

日陰に蔓延る陰花植物の様な思弁は、19世紀末のフランス知識人のある種の閉塞感・厭世観を表出させたものと言え、文学的評価は兎も角、貴重な作品に思えた。日本を含む東洋美術への言及が多い点も印象的だった。
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10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
作曲家ドビュッシーは、このユイスマンスの珍書を通じて象徴主義文学やデカダンス文学の世界に入っていきました(印象派と云われていますが、それは音楽的手法であって、彼が目指していたのは音楽による象徴主義である)。象徴主義芸術を知る上での良い手引きになり、また洗練された想像力によって、現実を体験する「『文学』とは何か」を考えさせられる作品でした。また非常に多くの作家が紹介されていて、私の知る、いくつかの作家の作品はこの作品によって出会いました。
隠遁生活におけるほの暗き、しかし極度に洗練された人工の美の世界を堪能する世捨て人デ・ゼッサント。仮想現実と現実の区別が曖昧になった病的な現代社会を思い浮かべてみるのも良いでしょう。
読む人を選ぶ作品です。
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46 人中、38人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
本書は読む人を択ぶと考えます。勿論、択ばれたから偉いとかその逆とかいうことでは全くなく、本書が放つ独特の臭気を好むか否かというただその一点だけなのであります。ある種の食虫花は腐臭を発することでハエをその粘着性のある花弁に集め、捕虫して溶かしてしまいます。まさしくわたしはデカダンの匂いを発する『さかしま』という食虫花に囚われてしまいました。

本書には中世キリスト教史、中世思想史、中世美術史にまつわる名がやたらと出て参りますが、特段の知識を必要とするものではありません。登場するのは「乾いた」モノ、人でいえばその名、であり、そのどれもが、ただ集められているだけで主人公デ・ゼッサントと確たる関係を取り結ぶものではありません。それらモノの集積は、デ・ゼッサントを中心として、まるで宇宙の系のように、閉じた世界を作ります。そして「ゴミグモの巣」のように擬装し内閉した、誰に干渉されるでもない世界において彼は、幻想の世界に遊ぶのであります。神経症から逃れるための幻想は更なる「ゴミグモの巣」のゴミを生み出し、擬装は更に重々しくなります。

しかし高踏的なモノの集積、その何たる豊饒!

現代では同じようなことをしても、このようにはいかんのでありましょう(例えばブレット・イーストン・エリス『アメリカン・サイコ』におけるモノの集積、に見られる退屈と不毛)。

ストーリーなんてほぼあってないようなものなんで、だらんと終わっても違和感ないなあと思いながら読んだら、その終わり方もすばらしい。

最後になるけど、当たり前ながら訳もすばらしい。

一読の価値はあります。でもその独特の臭気がお気に召さなければ、早々と退散しましょう。じきに体が溶けるかもしれません(笑)
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