若き魔法使いゲドと闇の世界からきた「影」との戦いを描いた第一巻、闇の力を祭った神殿と、不気味な地下迷宮を舞台に巫女であるヒロインが鮮烈な印象を残す第二巻に比べると、20数年後の時代を舞台にした本作は暗鬱な雰囲気に覆われ、描かれるテーマやメタファも重く一筋縄にはいかない。
先ごろ本シリーズのスタジオジブリによる映画化が発表されたが、本作が中心になるようだ。
第二巻でゲドとテナーが持ち帰った腕輪によりもたらされた平和から20年あまり、ゲドが大賢人となった時代が舞台(テナーの消息は若干触れられるが、残念ながら本人の登場はない)。魔法の力が失われ、世界の秩序が損なわれている、という辺境地帯から相次いで届く変報に、ゲドは若き王族アラン王子を連れ探索に出発する。二人はアースシーの島々を巡りやがて、秩序破壊の源と目される「さいはての島」に向う・・
重厚で暗鬱な雰囲気が全編を覆う(いかだ族の村のシーンはユーモラスだったが)。大賢人ゲドは従来以上に寡黙で、読者は、若いアラン王子と同じ苛立ちを覚えるかもしれない。ル・グインの描写は時折、直接的な描写は避け、断片的なセリフや間接的な描写でのみ描かれる場面もあるため、読者側も気が抜けない。紡がれるひとつひとつの言葉や文章を噛み締めながら読むことが必要(その分、再三再四の再読が可能な作品とも言える)。その先には、きっと大きな感動が待っている。