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鷺沢萠はエッセイ集「私の話」(河出書房新社)の中で「一般的な意味で使われる『家族』を作るのには失敗し」たと記しています。それでも彼女は、父がいて母がいて、そして子供がいて、という『家族』とは異なる、赤の他人同士の深い絆を描くことにこだわって小説を書いてきた作家です。家族とは「血のつながり」ではなくて、疲れたときに「帰る場所」。そのことを様々な物語で読者に提示してきました。
本書収録の三編はどれもまさに鷺沢萠らしい作風です。世間一般の家族以上に、互いを慈しみ、信頼し、手を携えていく他人たち。ことに「遮断機」は幻想的な展開を通して、親兄弟以上の『家族』の存在を静かに語りかけてきます。
「生きてりゃさあ、誰にだって、そんな日の一日や二日、あるもんさあ」(164頁)と語りかけるおじいの言葉が胸に響きます。擬似家族ともいえる人々との温もりの間に流れる時間が、いつしか辛い日々を笑い話に変えてくれる。人生とはそんな粋なものです。
本書の中で「人間は馬鹿な上に、毎日生きていかなければならない」(87頁)と綴る鷺沢が、その言葉を実行しなかったのは返す返す残念でなりません。
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