この本は、アガサ・クリスティーが、考古学者の夫マックスの発掘調査に同行した際のエピソードをまとめたものである。出発前の買い物から始まり、ブルー・トレインでの移動、発掘現場での様子が、ポアロを髣髴とさせるユーモアあふれる筆致で描かれている。なかでも、人物の描写が面白い。ブルー・トレインの食堂車で、代金の支払いをするために使用できるすべての通貨で計算し、一番交換率の良い通貨で支払いをする男、毛布と日記帳さえあれば、どんな条件でも耐えられる建築技師、安物好きでトラブルを招くアルメニア人の使用人、etc.。
出土品から、古の人びとの暮らしを類推する考古学者も、推理小説作家も似たような職業なのかもしれない。ミステリー執筆の舞台裏を垣間見たような気がした。