どんなに権威者になっても(彼はそう呼ばれるのを何よりも嫌ったが)、彼は決して物理学者としての誠実さを変えることはなかった。サバティカルでブラジルの国立研究所に滞在した彼は「教科書を丸暗記するだけ」の物理の大学教育に業を煮やし、ブラジルの「お偉方」の大学教授たちの前で「この国では科学教育が行われていない」と言い放った。またあるときは、学校教科書の選定委員としてすべての教科書に目を通し、教科書の内容が科学的誠実さを欠いているのを真剣に怒り、他の委員たちと闘った。
彼の信条でもある「好奇心」は年齢を重ねてもとどまる所を知らず、カジノではプロの博打うちに弟子入りしたり、ボンゴドラムでバレエの国際コンクールの伴奏をしたり、また、幻覚に強い興味を持った彼は、旺盛な好奇心からアイソレーションタンク(J.C.リリーが発明した感覚遮断装置)にまで入ってしまう。彼は他人のことなど気にとめず、素直な心で物事を見つめ、興味をひかれたらそれに夢中になる。彼は何より人生を楽しみ、人生を愛していた。
そんな彼の書いた本書に触れていると、いろんなことを話したくってうずうずしている彼が、目を輝かせて楽しそうに自分に向かって話しかけてくれているような気分になる。そんな気分にさせるのは、大貫昌子による素晴らしい訳のおかげでもあろう。訳者はファインマンと親交があり、彼に相談しながら翻訳作業を行っているため、原文の持ち味が十分に表れている。(別役 匝)
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最も参考になったカスタマーレビュー
89 人中、84人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
素晴らしい!!,
By noa-dr (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫) (文庫)
ファインマンは、くりこみ理論で朝永振一郎と一緒にノーベル物理学賞をとった物理学者。でも、その話はぜんぜん出てこない。
出てくるのは、ちょっとしたことへの着眼と興味、筋道だったアプローチ。それは物理にとどまらず、女の子だったり、絵画だったり、音楽だったりする。 わたしが、「努力」とよんで歯を食いしばってやることを、難しい面倒だといってあきらめてしまうことを、この人は眼をきらきらさせて、おもしろい!といって、わらいながらやってのける。 きっと、人生というのは、何も考えずに楽しく過ごすものではなく、広く深く考えれば考えるほど楽しいものなんだ。
46 人中、43人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
やりたいこと、好きなことを徹底的にやる!,
By
レビュー対象商品: ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫) (文庫)
いくつになっても好奇心でいっぱい!
ファンキーな物理学者ファインマンさん! 「やりたいこと、好きなことを徹底的にやる」 っていう姿勢を生涯貫いているのがかっこいい! ・物事は暗記ではなく、理解することによって学ぶ。 ・人がどう思おうと、ちっとも構わない。 ・驚異の心をもたない人間は、消えたろうそくも同然だ。 ・とにかく何かにアッと驚き、なぜだろう?と考える心を失わないこと。 そして、いいかげんな答えでは満足せず、納得がいくまで追求する。 わからなければわからないと、正直に認めること。 下巻+「困ります、ファインマンさん」まで 一気に読めます!!
78 人中、70人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
読まないと損をする自伝の傑作,
By カスタマー
レビュー対象商品: ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫) (文庫)
自らを語って一片の自惚れも自虐もなくこれほど澄明なユーモアに満ちた文章も珍しいのではないか。時にこのユーモアは抱腹絶倒の笑いに発展し、例えば徴兵検査で精神科医の検診を受けたさいの面白さはさながらウッディアレンの喜劇である。自分のことをまるで他人事のように語る筆遣いは欧米人によくあるスタイルの一つだけれども、この本のそれはちょっと一味違うように感じられる。それは自分自身の今に至る軌跡を面白おかしく描きながらも微動だにせぬ目で観察する科学者の視線といったものだろうか。沸騰する笑いと冷厳な観察眼その微妙なバランスがこの本の魅力を生み出しているのかもしれない。決して短くはない内容だが読み始めて気が付けばいつのまにか終章に至っており、そして読後感は実に爽やか!である。
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