なぜ、先祖供養は必要なのだろうか?
本書は、同じ双葉新書の『葬式は必要!』で、「葬式必要論」の旗手として注目を集める一条真也氏が、その続編として、「先祖供養必要論」に正面から取り組んだ意欲作である。
従来の類書は、「先祖供養をしなければタタリがある」式の検証不能な説明で、その必要性を説くものが多かった。
それに対し、本書の特色は、そうした霊感的な観点とは一定の距離を置き、あくまでも常識的な生活実感レベルで、先祖供養が人間の心身の健康にいかに必要であるかを、一つ一つ丁寧に確認していくそのバランスの良さにある。
第一部「先祖を愛してきた日本人」では、一条氏は、その博覧強記を十分に発揮し、日本人にとっての先祖供養の本質と重要性を、時事、歴史、社会、民俗、文化、哲学、心理、宗教等の観点から、時に緻密な実証を駆使し、時に大胆な学説を提出することで読み解いてゆく。
特に、日本的先祖供養に、神道・仏教・儒教の「和」と「分」を見るその分析は秀逸である。
一見、テーマが多方面に拡散するように見えつつ、一読後、それでもそこに確かな一貫性を感じるのは、一条氏の問題関心が全て、「人間の幸福」という一点に集約されているからであろう。
「現代人はさまざまなストレスで不安な心を抱えて生きています。ちょうど、空中に漂う凧のようなものです。そして、凧が安定して空に浮かぶためには縦糸と横糸が必要ではないかと思います。縦糸とは時間軸で自分を支えてくれるもの、すなわち『先祖』です。また、横糸とは空間軸から支えてくれる『隣人』です。この二つの糸があれば、安定して宙に漂っていられる、すなわち心安らかに生きていられる。これこそ、『幸福』の正体ではないでしょうか。」(185−186頁)
第二部「提案! 先祖とくらす生活のすすめ」は、年中行事、神事・仏事、墓参、仏壇、家系図等の作法について、何となく知っているようで実は曖昧な一般常識・ルール・マナーを再勉強できる点で貴重である。
本書は、日本人の先祖供養について、その思想・歴史的背景や実践的作法に関心を持った時に、まず最初に手に取ることを誰もに勧められる基本書である。
葬式は必要! (双葉新書)