手元において参照したい本。レンタル・ビデオ店がここまで肥大し、煌々と明るい店内でさあどれを借りようかと迷うのは楽しいけど、信頼できる水先案内人がいればそれに越したことはない。このガイドは信頼できる。見て、見て、見まくって、ほんとに心に残ったものだけを、さすがのイラストを添えた、かっちりした文章で紹介してくれる。ここに出てくる作品なら、はずれはありえない! ぼくはじつは疎くて、吉野朔実が熱狂的ファンのいる、しかもぼくと同世代の漫画家なんだということをぜんぜん知らなかった。ごめん。『ECCENTRICS』というすごい傑作の作者なんだということをある僧侶から聞かされたが、いまはそれを読むのを楽しみにしているところ。もちろん、本書にあげられた作品でも見ていないもののほうがずっと多いので、楽しみは当分続き、彼女の名前は机のそばにはばたくことになるだろう。さて、いろんな作品を見るにはどうしてもビデオということになるが、著者自身はぜんぶでっかいスクリーンで見ている。しかも! 彼女は「ちょっと時間が空いたんで映画見て来ちゃった」というせりふが絶対にいえない性分なんだそうだ。前の日から心づもりをして、そのためだけに家を出る人。ぼくらはよろこんで後塵を拝することにしよう。「映画は今の自分とはまったく違う世界に連れて行ってくれるどこでもドアです。座ったまま出来る冒険、起きたまま見る夢です。違う視点で世界を見る方法を教えてくれます。(......)たった2時間で今まで考えたこともないようなことを考えさせてくれます。」もしきみが18歳で、目ざめている時間の使い方がわからなければ、とりあえずこの本をガイドにして、起きたまま見る夢の見方を学んでみたらどうだろう。すると映画が、視力を鍛えてくれる。めちゃくちゃに遠くまで見えるようになる。そのときには、もう座ってなんかいられなくなる。