それゆえ、見かけが華やかだったり、複雑な手順を必要とするレシピはなし。そのかわり、ちくわの磯辺揚げやいなりずし、深川飯など、しみじみとおいしく、大切な人とほのぼのと分かち合いたい味を紹介している。料理の手順も簡単なものがほとんどで、いちばん凝っている「揚げなすとベーコンのスパゲティ」でさえ、たった6ステップというわかりやすさ。そのかわり、各レシピには大切なポイントが添えてあったり、巻末にも文章中に出てくる野菜の切り方(小口切り、たんざく切りなど)の写真や、だし汁の取り方の解説が載せてあったり、と初心者にも親切な構成である。
49のレシピの中には、夏みかんをむいて砂糖をかけただけのデザートなどもあるが、簡単すぎるといって侮ってはならない。忙しさにまぎれ、食事はコンビニ弁当やファストフードで済ませてしまいがちな日常の中で、誰かが夏みかんの房をひとつずつきれいにむいて用意してくれたものほど、やさしい気持ちになれるデザートがあるだろうか。シンプルでも、作る人の心づくしが感じられる料理は、食べる人を思わずクラッとさせる。著者が、本書のタイトルを「女もまいる」としたのは、そんなところからだろう。(和久裕子)
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