本書は、百体以上の妖怪ブロンズ像が立ち並ぶ「水木しげるロード」で知られる境港市のガイドブックであり、町おこしの参考書でもあり、水木しげる氏を知るための本でもあります。全ブロンズ像に加え、元になった原画がカラーで紹介された目にも楽しい一冊です。
水木氏は言います。「よく妖怪と幽霊を同じものだと思う人がいるけれど、それはまちがいでね、妖怪ははじめからそこにいるものなんです」「人類が生まれてから人間と妖怪は共存しているんです。妖怪やお化けと共に、生きているほうが、人間にとって自然なんです」
と、抜書きすると何のことやら?と思われるでしょうけれど、本書を読むと、これらの言葉が違和感なく浸透してきます。万能感をもち、便利さを限りなく追求し、拝金主義の人があまりにも増えてしまった時代。こんな時こそ妖怪が必要なのかもしれません。世の中には畏れるべきものがあり、人知の及ばない所があり、コントロールできないものがある。だから驕らず、人々が手に手と取り合って生きなければいけない。そんなことを教えてくれるのが妖怪の仕事のひとつであるように思えるのです。
境港市は妖怪とともに生活できる稀有で幸せな町です。そこへ続々と人が訪れていることに何かしらほっとする気持ちになりました。
「人生なんてしょせん、その人は一生のうちでどのくらい笑ったかどうかで価値が決まるんじゃないですか」 水木氏の言葉です。