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本書では、1巻の主人公であったゲドは重要な脇役となり、アチュアンの墓所という全く生気のない世界で「名なきもの」に仕える大巫女となった少女を中心に物語が展開します。盲目的に名なきものに従っていたがゆえに闇への恐れすら知らなかった少女が自律へ向けて味わう苦悩と不安。人間の成長過程が象徴的に示されているように思います。
テーマは重いのですが、アースシーという仮想世界が細かく一貫性を持って記述されるため、難しい事を考えなくても物語の中に引き込まれてしまいます。1巻では魔法や魔法使いの生活、竜の生態といった叙述を面白く読みましたが、この巻では、墓所での生活や地下の大迷宮の探検の叙述を楽しみました。この緻密な世界造形が本シリーズを大人まで楽しめる一級の作品に高めている要因だと思います。独立して読める物語ですが、やはり第1巻から順を追って読まれることをお勧めします。
1巻はゲドという少年が挫折しながらそれを克服して成長する物語とすれば、2巻はアルハ(テナー)という少女が自立し、自分を確立する物語です。
ル=グィンは女性作家で、心理描写においてはおよそSF作家離れした深みを持っています。1巻に比べると2巻の舞台はスタティックで、アルハの内面描写(心理的葛藤)に多くの時間が割かれますが、これは、実は多くの少女が成長において共通して体験する、「自立への葛藤」を語ったものであると思われます。
アルハの場合、ゲドとの出会いという事件において、「闇」に支配された幼女時代から思春期を通り過ぎて一個の女性までの「羽化」が一気に進行し、巻頭では「客体」であった女の子が一気に「主体」となり、ゲドも含めた2人の命をかけて、自我の確立と自立のための戦いが爆発し、一気呵成に進行していきます。
しかし、テナーの自立への葛藤は、2巻のラスト手前で、もう1ひねり、複雑な展開をします。これはもうそれだから女の子なんだなあ(男は単純だ(^^;))ということで、必見です。
女の子が読めば、物語の暗喩の数々が、親や周囲の束縛から巣立っていく時の自らの不安や葛藤に重なり、思わず同化してしまうだろうと思います。
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