本書は今の経済がなぜこのような危機に陥ったかを解き明かし、
その解決法は何かを探る。
現代は『Whose Crisis,Whose Future?』邦題通り『これは誰の危機か、未来はだれのものか』であるが、
フランス語訳である『Leurs Crisis,Nos Solutions』「彼らの危機、私たちの解決法」の方が内容に沿っているかもしれない。
『これは誰の危機か、未来はだれのものか』という問に本書は「世界の富を握る1%の富裕層の危機」であり、
「未来はその1%のために存在する」ように、今動いているのではないかという。
しかしそれはそのとおりに動かしてはならない。
「危機は富裕層よりも貧困層に大きな打撃」を与え、「未来はすべての人類のために存在する」のだから。
「多くの人は気づいていないが、私たちは牢獄の中にいる。私たちを明るい空の下で自由の動きまわらせ、
時には観たい映画も観に行かせるが、生活の最も重要な場面になると自由がない」
本書はそれを具体例を挙げて説明する。
「『革命』ということばは魅力的だが、『革命』は起こらない。なぜなら、皇帝とその重臣たちの首を吊るすべき
宮殿の在り処さえ、市民にはわからないように巧妙に隠されているからだ」
本書はその宮殿の在り処を教えてくれる。
1%の富裕層のことを著者は「ダボス階級」と名付ける。
通称ダボス会議、世界経済フォーラム(World Economic Forum)は、ジュネーヴに本部を置く非営利財団である。
スイスのダボスで開催される年次総会が特によく知られており、選ばれた知識人やジャーナリスト、トップ経営者や
国際的な政治指導者が一堂に会し、健康や環境等を含めた世界が直面する重大な問題について議論する場である。
つまり世界の経済はすべて彼らの都合の良いように動かされる。
彼らはこう考えている。
「要するに、もう金なんかどうでもいいと思えるほど、稼げばいいんだ」
イデオロギーのセールスマンに我々は騙されてはいけない。彼らはこう言う。
・コスト、効率、質、消費者価格の点で、民間初音の公的機関に勝る。
・国が、国民への支援を持ちかける官僚のつくった制度に、人々を巻き込むのはよろしくない。
・個人には自己責任で、成功もしくは失敗をする自由を与えなくてはならない。
・富裕層が富裕なのは、彼らがあなたがたより賢く勤勉で積極的で行動力があるからである。
富を生み出し、雇用も生み出す富裕層やその会社には最小限の課税にとどめるべきだ。
「『すべては自分の為に、なにひとつ他人には与えない』というのが、どの国のどの時代にも
支配者に共通する浅ましい考えだ」
こう述べた有名な人物は誰か。
マルクス? いや違う。
こういう信念を持っていた人物は「見えざる神の手がすべての市場に均衡を与える」と言った
アダム・スミスなのである。
犯人が褒美を受け取り何の罪もないものが罰を受ける経済は、我々の未来を決して切り拓かない。