経営、戦略、異文化コミュニケーションから始まり、生産管理、財務、会計、マーケティング、人事、SCM,R&D,企業結合、法務をカバーして、国際経営に関する理論、実務を紹介しようとする意欲的著書であり、簡単な解説の後でQ$A方式で理解を確かめようとするなどの工夫がある。意欲はあるが、大学生、大学院生を対象とするテキストとしては、少し古い考えに基づくものであり、有効性にやや疑問がある。急激に変わる社会、経済環境に対応しなければならない経営を扱う経営学は、とかくすると、まだ実現していない夢物語を伝えるか、既に現実から離れた過去の理論と経験を伝えることになる。本書の場合も、その記述と参考文献から判断して、後者に属するものと思う。例えば、SCMを本書では企業間サプライチェーンを現在の段階としているが、多分、それを超えて、最終消費者に至るチェーンまでを扱い、更に、新製品開発、マーケティングにつながるところに行くのが現在の趨勢であろう。(それが出来なければ、負け組みとなる。)最新の参考文献は2007年となっているが、多分、この文献でもそこまでは扱っていなかったのであろう。参考文献の選ぶ際にも、注意が必要である。
また、本書では、日本の製造技術能力を高く評価しているように思うが、これも少々ピント外れのように思う。日本の製品も技術も必ずしも高い値段で売れておらず、台湾、韓国、中国などに負けつつある。日本の企業に潜在力は残っていると思うが、これまでの経験と実績はピーク・アウトしていると思われる。これらカレントな課題も取り上げてこそ、テキストとしての価値がある。