ずっと、ずーっと読んできている川上弘美さま最新作。38歳子どもなし主婦の「わたし」菜月は、自分の本音に気づかないだけの、ありふれたぼんやり女だ、と感じた。設定が平凡であればあるほど、読ませる力量が問われるはず。以前の作品には、読む側をぎょっとさせるような途方もない能天気さというか、壊れた感じ、崩れた感じを隠し持っている女が出てきたのに、最近の主人公は、なんだかみんなのっぺらぼーだ。
そもそも主人公が悩んだり、格闘したり、とくに最後に悟ったらしいことは、世のほとんどの既婚の女が、とっくに気づいていることじゃないだろうか。「これでよろしくて?同好会」の存在も、筋にうまくリンクしていない。それに、「女子」という単語が何回も使われ、なんだかなあ……。以前より単語や句読点の付け方もおとなしめになっている。言葉に対するこだわりはどこへ行ったのだろう。
川上弘美といえば、昔は食べ物とセックスと魔物、と評されていたと思うが、包丁を持たせたら私はスゴイんです、みたいな「食」へのこだわりは感じられなかった。セックスは、「わたしと光(夫の名)は、するのだ」という一行で逃げている。そして、魔物は(出ればいい、というものでもないが)「真鶴」以降、出ない。結末近くで、おっとと思ったけれど、結局何だったのかよくわからなかった。
確かに、彼女の描き出す女の世界は面白かった。特に同好会のおばちゃん二人の掛け合いは出色。でも、読みやすいだけでは彼女の世界は許されない。しかも今回の女たちは、「センセイの鞄」みたいな「おひとりさま」で毅然と飲んで食ってやるぞ、というのではなく、ベタベタ群れているだけに感じられた。
ともあれ、単行本は高いが、新刊が出たら次もすぐ買いますから、なんとかして下さい、弘美さま。