何十年にも渡り、佐藤さんの著作に励まされてきました。私の人生最大の恩人です。
今作執筆時は86歳(!)の佐藤さん。さすがに筆の冴えに衰えを少し感じます。老人特有の話題がふらふらと飛ぶ事になぞらえ、筆を進めておられます。各編のタイトルは「とりとめもなく○○○」となっていますから、意図されているのでしょうが・・
1編の長さが長めという事もあるのでしょうが、以前のように奇跡のような文章でトントントンと話が進み、見事な締めでうならせられる、というエッセイとは私には思えませんでした。基本的に理解できないという諦念、怒ってもしようがない、世の流れには逆らえないという感情が底辺を流れているからか、佐藤節が表れても、全体として静かな印象です。
また、過去の思い出をベースに話が展開する形ゆえ、以前に何度も書かれたエピソードが多数登場するので、佐藤さんの著作を多く読んでおられる方は「ああ、またその話か」と、お年寄りの昔話を聞いている感覚におそわれると思います。それでも、佐藤さんの作品は素晴らしい。もっともっと・・・とファンは思ってしまいます。
「そろそろ潮時だ。もう友を面白がらせたり怖がらせたりする力もなくなってきた。体力だけでなく気の弱りが出てきている。気の弱りの出た佐藤愛子なんぞ、何の値打ちもないのである。六十七歳から丁度二十年。キリもいい。このあたりで罷り散ります。皆さんさようなら。粛々と、これでおしまい。」これが最後の言葉です。私はこの文章を読んで泣いてしまいました。何十年も私達を楽しませてくださった佐藤さん。これ以上求めてはいけないんだなあ、本当にありがとう、愛しています!と、感謝の気持ちでいっぱいになりました。佐藤愛子ファンは必携だと思います。