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今最もチケットがとれない劇作家・松尾スズキは、副業とするエッセイにおいて、口語、それも日常僕らがほぼ無意識に使っている口語をベースにした、あたらしい息つぎの文体を開発している。書き言葉ってどこまでくだけられるのか? そんな努力が一応の頂点にたどりついた、松尾が好きなヴォネガットで言えば「猫のゆりかご」のような、いい意味で力の抜けた一品である。同じタイミングで出版された松尾の「永遠の10分遅刻」は、これよりはもう少し生硬で知的(この場合、悪口)な印象で、ヴォネガットでいえばちょうど「猫」の前の「タイタンの妖女」あたりになぞらえられるといったら、なぞらえすぎか。
「傲慢反省手帳」というコラムのタイトルからも察せられるとおり、全編を通!して一貫する過剰なまでに腰の低い感じ、超ササイな問題に思い悩み格闘する感じ、その「背伸びしなさ」加減といったら、当代きってのもう一人の雑文書き、あの「誰も知らない名言集」のリリー・フランキーさえをも凌ぐ。
「(中略)気高さやプライドみたいなものがはぎとられ、舌打ちや『ねーん』でかたづけられてしまうシンプルな自分というものを確認するために、我々はそのような場所(牛丼屋、一〇〇円ショップ、立ち食いそば屋など)に出向くのかもしれない。そんな自己の本質的ちっぽけさから目を背ける者を、むしろ私はなんだかなと思う。」
ミエやカシコマリをふりきった「シンプルな自分」がくり出す言葉の潔さ、気持ちよさ。中でも「君が代」の好き嫌いについて、もちろん政治系国家系の物言いなんかいっさいせずひたっすらくだらない印象論に終始する「む~す~」篇がマイ・ベスト。思わず写経に及んでしまったほど。
笑いたいけど笑いに人一倍厳しいという人に、ぜひ。
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