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あたりまえのことばかりの日々の生活において,われわれはどんなにすごいことをしているか,と同時に,どんなに驚くべきことを隠ぺいすることによって,驚きとひきかえに,安定した生活世界が手に入れられているのかが,示されてゆく。
現象学は,哲学の専門的訓練を積んでいないわれわれ素人が,そこらじゅうに転がっている不思議に気づき,手ぶらで不思議の根源に迫って行くのに,とても好都合で自然な哲学ではないかと思う。
ただ,一番おもしろかったところの1つ,時間や空間が形成される以前の世界の叙述については,こうなっている,と説明されるだけで,こうなっている世界に触れるまでの思考の道のりが描写されているわけではない。だから,読む方としては,現象学的思考のステップを踏まずに,自分で確かめることのできない世界像を知らされることになる。この世界に独力でたどり着くためにどうすればいいのか,本書を読んでみてもわからない。少し残念だが,どうしようもないことなのだろうか。
本書は「現象学とは何か」を平易に示して入門書の役割を果たしているにとどまらず、それを方法論として用い、後のメルロ=ポンティやレヴィナスに引き継がれていく「身体」や「他者」にまで考察を広げています。特に後半は、谷氏自身が、現象学者としてのプライドを見せつけているのも相俟って、示唆的で面白かったです。ただ、分量的に難しいのでしょうが、ハイデガーやシュッツ、シェーラーなど他の現象学者の受容や現象学への批判についても取り上げて良かったかもしれません。とはいえ、満足できる一冊でした。
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