憲法学者の長谷部恭男と,政治学者の杉田敦による,現在の日本国憲法の状況をめぐる討論。
全編を通して,杉田教授が質問し,長谷部教授が回答するというスタイルがとられている。この手の「対論」は,お互いが好き勝手なことを言いだすと収拾がつかなくなるが(明らかな失敗例として,『
憲法対論』),本書はこの点,かなりうまく進行されている。杉田教授の質問は,揚げ足取りに走ることもなく,かといって予定調和に陥ることもなく,読者に対して論点を分かりやすく提示している。
本書の主張は,各章のタイトルに表れているのでこれを引用すると,
(1)憲法はデモクラシーを信じていない
(2)絶対平和主義は立憲主義と相いれない
(3)憲法解釈はだれのものか(→専門家のものである)
(4)絶対的な権利なんてない
(5)あらゆる憲法は「押しつけ憲法」である
(6)憲法をいま変えることは無意味である
となる。(6)が本書のとりあえずの結論で,この部分のみをみると従来の護憲派の主張と同じようにも思える。しかし,一番のポイントは(2)で,長谷部教授は「自衛隊=違憲」という従来の憲法学界の通説に異を唱えているのである。
長谷部教授は以前にも,一般向けの新書として,以下の2冊
・『
憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)』
・『
憲法とは何か (岩波新書)』
を著している。本書も含めた新書3冊は,議論のウエイトの置き方に差はあるものの,内容は重なる部分が大きい。難易度も同じくらい。いずれもそれなりに難しい。しかし,読みやすさとリーダビリティの点において,本書に一日の長がある。「憲法のことはよく分からないんだけど」という人には,本書がおすすめ。