「まえがき」でも触れていますが、この書籍は2004年7月から9月の毎日曜日に、13回にわたり、『日本経済新聞』で連載されたコラム「御用達を味わう」がベースになっています。
私はこのコラムを読みながら、「いずれ一冊の本になればいいな」と思っていましたので、本書の刊行を知ると、喜び勇んで読ませていただきました。
本書を読んでまず感心したことは、御用達各店をじつに丁寧に取材された上で書かれている点です。ご当主の方々のお話をしっかりと聞きながら、商品が完成するまでの手間のかけようを、一つひとつの言葉に置き換えている点でした。「宮内庁御用達」という制度自体は、いまから約半世紀前になくなっているようですが、いまだに多くの方々から愛されている理由を知った思いがします。
著者の鮫島敦さんは、本書に著す視点として、「宮内庁御用達の品々を通じて、己の人生を賭け、モノづくりに精魂を傾ける人間たちの息遣いだった。伝統の製法、手法にこだわり、誠の手づくりを大切する姿勢をお伝えしたかったのだ」と語っています。そして、「日本の庶民は手仕事の中で己を鍛え、磨いてきた」と。
この視点に、私は心惹かれました。小さな本ですが、中味はぎっしりと濃くて深いと思いました。