「これから食えなくなる魚は何か」ではない。2048年には「魚は食えない」かも知れない。マグロの漁業規制は知られているが、世界中の75%の種類の魚は、すでに乱獲に近い水準だといい、年々世界中で激化する水産資源の争奪戦に警鐘を鳴らす。捕鯨推進の顔として世界に知られる著者なので、漁業拡大かと思いきや、魚類保護を強く訴えている本だ(鯨類は数少ない「もっと獲ってもいい資源」と書いてあるが)。
とにかく、国内の漁獲高の減少は著しい。急減のため、地方の漁港は荒廃し、崩壊の危機に瀕している。また、マイワシ、キンキ、タラバガニ、マサバなどは最盛期の10分の1前後の量しか獲れていないのに、もっと獲ろうとするから、減少に歯止めがかからない。気象要因もあるが、総漁獲量に達するまで早い者勝ちで獲りたいだけ獲ってよしとする日本の漁業管理のやり方が乱獲を激化させたという。著者は諸外国のように、個々の漁業者に漁獲高を割り当てる方式の導入を訴えている。
国際会議でのタフネゴシエーターぶりやエール大MBAと、切れ者イメージの著者だが、本書には宮本常一の引用や魚食文化、歴史の記述も多く、国の漁業政策の誤りも指摘するなど、中央官僚にとどまらない視線の広さも持つ。また、水産庁やFAOのデータを豊富に用い、コンパクトかつ効果的に日本漁業の現状を伝えている。
今は出向中だが、水産庁の人なので、柱となる主張は政府広報とそんなに変わらないようだが、魚にまつわる知識も豊富で、漁業について興味深く学べる内容だ。