たとえば、イントロダクションでは何を書くべきなのでしょうか。よく、こん
な論理のイントロダクションを目にします。
Aを明らかにすることを目的とする。
なぜならば、Aが明らかになっていないからだ。
これは、こんな風に人に頼むのと同じです。
ここに穴を掘って下さい。
なぜなら、ここに穴が無いからです。
こう言われて穴を掘る人はいません。穴を掘ってもらうためには、どうしてそこ
に穴を掘るのかを説得する必要があります。
なぜなら、徳川幕府の埋蔵金が埋まっているからです。
世の中には、穴の無い場所が無数にあります。そして、ある場所(埋蔵金が埋
まっている場所など)は穴を掘る価値があり、他の場所は穴を掘る価値がありま
せん。同様に世の中には、「明らかになっていないこと」が無数にあります。そ
して、あることは明らかにする価値があり、他のことには明らかにする価値があ
りません。たとえば、サッカーくじtotoを惜しくもはずす技術(けっして当てて
はいけない)を開発していったい何の意味があるのでしょう。
論文を書くとは、この論文を読んで下さいと読者に頼むことです。読者に読む
気を起こさせるためには、イントロダクションで、どうしてA を明らかにする必
要があるのか(Aを明らかにすることにどういう価値があるのか)を説得するこ
とです。「明らかになっていないから」というだけでは、読者は納得してくれま
せん。なお本書では、「イントロ折り紙」という、「どうしてやるのか」に説得
力のあるイントロダクションの書き方のコツを紹介しています。
本書のもう一つの特徴は、学術雑誌に論文を投稿してから、学術雑誌への掲載
が決定するまでの各段階でするべきことも解説していることです。原稿を書き上
げればお終いのはずがありません。学術雑誌に論文が掲載されるまでには長い
道のりがあるのです。
本書の説明は、「論文書きの歌」に沿って進みます。これは、「アルプス一万
尺」の替え歌で、歌詞が 18 番まであります。また、ベガルタ仙台に関する架空
の論文を題材に、楽しく、かつ、どんな研究分野の方にも理解できる説明を心が
けています。本書が少しでも、「これから論文を書く若者のために」役立てば幸
いです。
本書は四部構成です。
第 1 部では、なぜ、論文を書く必要があるのかということと、論文に関する
いくつかの基礎知識を説明します。
第 2 部は、論文書きの実践編で、本書の核となる部分です。前半部分は、
論文のそれぞれの章で何を書くべきか、そしてそれをうまく書くためのコツの解
説です。後半部分は、原稿を書き終えてから学術雑誌に掲載されるまでの道のり
の解説となっています。
第 3 部では、いかにして論文を書き上げるか ---
執筆に向かう姿勢 --- に
ついて助言をします。初めに、効率の良い執筆作業の進め方を説明し、次に、な
かなか論文を書けない若者を叱咤激励します。
第 4 部では、わかりやすい論文を書くコツと面白い論文の条件を紹介しま
す。わかりやすい論文を書くコツの説明は、文章の書き方一般に通じるもので
す。
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