「阿弥陀堂だより」の筆者の最新作品集です。帯には「ゆるせなかった父も、…いまはただ愛おしい」「連作小説集」という言葉があります。作者らしい淡々とした筆致の「エッセイ」を読み進めつつ、このコピーはなんなのだろうと思い続けました。そして、終章近くなったとき、それまでの章が収斂され、初めてこのコピーが本当なのだとわかるのです。その構成からこれはエッセイの文章による小説であるということ。作者が許せないと思い続け、そう書き続けてきた父を、思いがけないことで、頭でなく、いやおうなく心が許してしまう、そういうことがわかるのです。ずっと許せなかった父親を許せたことは作者にとって、重荷を下ろした思いだったことでしょう。
果たして、私自身にそんなときが訪れるのだろうか。私もこの重荷をいつか下ろしたい。作者には、静かな祝福の微笑みを送りたい。そんな読後感を残してくれた作品でした。