【のほほん】物静かな父、ときおり不安定になる母。日常よくあるドライブのワンシーンから広がる家族の機微。なにかとキレやすいご時世、のほほんの境地ってどうやったら到達できるんだろう……。余韻が胸にしみてくる叙情的アイロニー。
【逃げる】夢から逃げた一流商社マンと、現実から逃げた売れないミュージシャン。逃げたという過去を悩む2人は、今を精一杯生きる女友達に触発される。悩むってまだ余裕があることなのよ……。悩める心を癒す論理的モノローグ。
【この星】この星は2つで1つ。なにかを選んだ瞬間に相反するもう一つのものが生まれている。男と女、黒と白、光と闇、生と死、戦争と平和……。だから、どれを選んでも間違いなんてないんだよ。耳心地のよいフィロソフィー。
【桜梅桃李】梅に囲まれた1本の桜。梅の花が咲きだすと、つられて花を咲かせてしまう困った木。まわりなんて気にしないで、焦らず慌てず自分の持っている良さを活かせばいいのに……。自分探しの旅へ手招きする上質なファンタジー。
なお、オールカラーで構成されているデザインは、村上龍・著『寂しい国の殺人』など斬新なセンスで定評のあるシングルカット社の鳥居昭彦氏と、2002年1月に逝去したデザイン界の巨匠・田中一光氏の片腕として6年間「フェラガモ」や「無印良品」などにかかわってきた おおうち・おさむ氏が、また英訳は外務省の通訳文書の仕事をこなすジョン・タムラ氏が手掛けるなど、アートブックとしても質の高いものとなっています。瞳がよろこぶという体験を『この星』でぜひ味わってみてください。
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この本は、道を極めた1人の「人」である林原めぐみさんが、その感性のままに綴った詩的物語なのです。
本を開くと左に詩の様に書かれた数行ずつの文章、右に綺麗なデザインの写真にさりげない英訳が添えてあり、一見すると絵本の様な印象を受けます。
4つの短編はいずれも毛色が異なるものの、その底辺に流れるものは一貫しています。
写真は、中には「?」と思うものもあります(笑)、何かしらゆったりと感じてしまうものばかりです。
そんな物語と写真とを、カラフルでシンプルなデザインが取り囲み、何とも言えない味を醸しています。
何かと慌ただしく不安も多い現代、「ホッ」と一息つきたい人に是非お勧めしたい、肩の凝らない一冊です。
その声同様、触れるだけで妙に癒される才能が、林原さんにはあると思います。
文筆の世界では無名に近い彼女を見出して、3年もかかった(「あとがき」より)執筆をじっくり待ち、そこにしっくり見合うデザインを施して文字通り「きれいな本」に仕上げられたKTC中央出版さんに、敬意を表したいと思います。
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