スタントマンたちに共通していえることは、みんな馬鹿がつくほど、無垢であり真面目でありひたむきであることだ。妻子ある親友に女房を寝取られ、出産後息をひきとる彼女が残した女の子を育てていく立花。夫婦が揃えば娘をきっと幸せにできるだろうと考えて、新しく事務所に入ってきた素性の知れぬ愚鈍な女と、とにかく結婚をしようと決意する立花。さらに、女の出来の悪い弟の存在が明るみにでれば、笑顔ひとつで同居させてしまう立花。みんながみんな一途であるが故に生じる軋轢の数々。それが「笑い転げながら涙にむせぶ」という、つかこうへいの小説ならではの読書体験を生んでいるのだ。本書は傷つき、傷つけられる人たちのピュアな愛と友情を描いた傑作である。