著者の、日本をかたちづくった古今の史実を縦横に語った本で、最重要なシリーズの1つが「この国のかたち」。雑誌「文藝春秋」巻頭随筆欄に毎回アット・ランダムに選んだ日本史上の事件や社会・文化の制度を1テーマ10頁超で1話にまとめあげたものを集めている。活字は大きく(つまり頁あたりの文字数は少なく)、とても読みやすい。他の著作でも書いていることの繰り返しとなる話もあるが、いわゆる司馬史観のエッセンスが詰まっている。連載が日本史の時間順に並んでいないので、話が色々な時代に飛ぶが、それも著者のエッセーらしい。また、著者の晩年に始まったシリーズだから、著者が書き残しておきたい事項ばかりと思うのは私だけだろうか。
この第一巻は86〜87年の連載を収録しており、全24話。その中でおなじみの朱子学と統帥権が日本史に及ぼした弊害の糾弾が本書の白眉だろう。
その他、歴史上の人物としては信長、諭吉、正成、孫文等に触れつつ、若衆制や械闘等、庶民の生活への目配りも忘れない、著者らしさが好きだ。