古今西洋の著名哲学者の思想とエピソードを各々10ページ前後にまとめた書である。各章のはじめに、その哲学者が言った箴言、警句を置き、それを説明するかたちで、思想を述べるというスタイルだ。哲学史を勉強していて分かりにくかった思想を、日常の言葉で読み易くかつ興味深く陳述している。例えば「神も空も物体もないと仮定してみよう。そしてわれわれ自身も、手足はないし、身体はまったくないのだと考えてみよう。でもそう考えたって、そんなことを考えるわれわれは存在しないわけではない。考えている最中に、考えている本人がいないなんて矛盾しているではないか。」。これはデカルトの『哲学原理』を引用した本書の引用である。デカルトといえば「我思うゆえに我あり」という言葉で有名だ。この言葉を知っている人は多いと思うが、その意味はといわれれば、はっきり答えられる人は意外に少ないのではないか。こんなふうに、「人間は万物の尺度である」(プロタゴラス)、「理性的なものは現実的であり、現実的なものは理性的である」(ヘーゲル)などが紹介されている。ただ、カント、ウィトゲンシュタイン、フッサールなどの一般的に難解とされている人物の思想の説明は、初学者には分かりにくいところがある。しかし、多少哲学史をかじったことがある人には、面白く読める本に仕上がっている。蛇足だが、『この哲学者を見よ』よりも『この哲学者を聞け』の方が内容的には合致しているように思える。