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この人から受け継ぐもの
 
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この人から受け継ぐもの [単行本(ソフトカバー)]

井上 ひさし
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

多彩な文学作品と幅広い社会的発言を遺した作家、井上ひさし氏。その深い関心対象となった人物をめぐる講演・評論を編む。吉野作造の憲法観、宮沢賢治の生き方、丸山眞男の戦争責任論、そしてチエーホフの追求し続けた笑い……。真摯でしかもユーモラスな同氏の胸の内が、小説・戯曲とは異なる直截な表現で率直に明かされる。

内容(「BOOK」データベースより)

吉野作造の憲法・国家観、宮沢賢治にとってのユートピア、丸山眞男の戦争責任論、チェーホフの笑劇・喜劇…。これらの思想家・作家に深く魅せられた井上ひさし氏の思いとは、いったい何だったのか。自らの知的好奇心と重ねながらそれぞれの意外な人間像を語り、その生き方と著作に今日へのメッセージを読み取る。併せて、笑いの謎とその本質に迫った傑作エッセイも収録。

登録情報

  • 単行本(ソフトカバー): 180ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2010/12/18)
  • ISBN-10: 4000229079
  • ISBN-13: 978-4000229074
  • 発売日: 2010/12/18
  • 商品の寸法: 18.8 x 13 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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16 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By Gori トップ500レビュアー VINE™ メンバー
チェーホフ論が面白い。
チェーホフは44年の短い生涯で目覚しい演劇革命を成し遂げた。
一に、主人公という考え方を舞台から追放した。
二に、主題という偉そうなものと絶縁した。
三に、筋立ての作り方を変えた。戯曲から物語性を追い出した。

こチェーホフから、井上さんは多くのものを学んだのである。そして次のような考えに至った。
「ちゃんとした喜劇作者は、普通の人達の生活を凝視する。喜劇の題材は、普通の人達の日々の暮らしの中にしか転がっていないからだ
 さらに彼は(その度合は様々であっても幾分かは)社会改革家にならざるを得ない。自分を含む普通の人たちの生活を見つめているうちに
 たいていの人たちが、たがいに理解し合うことを知らないためにそれぞれ物悲しい人生を送っているという恐ろしい現実を発見するからだ」

「喜劇作者は社会改革家にならざるを得ない」という命題にはぼくは賛同できないが、
この考え方が井上さんの基本姿勢だったことがよくわかる文章である。
このレビューは参考になりましたか?
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By itgaki トップ500レビュアー VINE™ メンバー
井上ひさしさんが吉野作造、宮沢賢治、丸山眞男、チェーホフについて著作からその人なりを語りつつ、最終章では「笑いについて」と題してジョン・ウエルズ、アリストテレス、ルイ16世、スクリープが提供した笑い(井上さんの解釈による笑い)を紹介しています。

前の3人については講演をまとめたものなので、語り口調な文体ですが、あとのチェーホフ、笑いについては井上さんの執筆を再収録したものです。
どの章についても井上さんらしい視点で語っているので非常に分かりやすいですが、井上さんの分野(劇作家)と近しいチェーホフについての章と「笑いについて」のスクリープ(劇作家)の章が、個人的には面白かったです。
自分の体験・創作との比較がベースにあるからなのかもしれませんが、井上さんが非常に評価していることが分かります。

前半3人についても面白いのですが、どちらかというと各々の著作を論じるよりも、その方々の半生を語る中で著作の位置づけを語っている印象でした。

今となっては、懐かしい井上節ですが、このような形で他の方々を評したものを読んだことがないので、新鮮で面白かったです。
井上さんファンにはお薦めの一冊です。
このレビューは参考になりましたか?
  劇作家、井上ひさしさんが生前に書いたもの、講演会での話を、「この人から受け継ぐもの」というテーマのもとに編集された本で、「この人たち」とは井上さんが敬意をもっていたり、私淑していた人たち。
  その人たちとは、吉野作造、宮沢賢治、丸山真男、チェホフである。井上さんは旺盛な好奇心、知識欲に裏づけられた知見をもっていた人で、多くのことを教えられた。
  吉野作造をつうじて憲法・国家論を論じた文章では、この学者が唱えた民本主義(民主主義と同義)の内容とその思想と戦後の憲法との関係がわかりやすく説明されていたほか、日露戦争のアメリカの企みがなるほど感覚で解説されていた。もちろん、当の吉野作造の果たした役割と社会貢献も丁寧に記述されている。
  宮沢賢治では、この作家がかなりの躁鬱病に悩まされていたこと、めざしたユートピアがどのようなものであったのか、井上さん自身がもとめるユートピアの賢治のそれとの相違など、面白く論じられている。
  丸山真男では戦争責任論について触れられ、インチキ東京裁判(勝者が敗者を裁いたという単純な構図ではなく、天皇訴追をたったアメリカの意図)、戦争責任が曖昧にされたことの犯罪性をついた丸山真男の遺訓の継承を唱えている。チェホフの笑劇・喜劇を論じた文章では、チェホフの演劇のなかだなにが新しかったのか、ヴォードヴィル(歌あり踊りあり滑稽な話芸ありの大衆向けショー、あるいはそのショーに挟み込まれている笑劇やコントやスケッチの類)がどうして重視されるべきなのか、などについて解説されている。チェーホフの人柄、チェーホフ演劇の革新性よくわかった。
  最後の「笑いについて」は未完成稿であるが、ジョン・ウェルズの笑いを初め、アリストテレス、ショーペンハウアー、キルケゴール、あるいはスクリーブの笑いをとりあげ、笑いの正体を追及している。
  笑いとは、人間がその共同生活体である社会に対して適合性を欠いたときに発生するもので、笑いはそれに対する処罰であり、矯正なのだそうだ(p.138)。
  また、ショーペンハウアーとキルケゴールは「矛盾や不釣り合いの要素が、同時に同一のコトガラに属しているとき、笑いが生まれる」と言っているそうである(p.139)。
  難しい話をわかりやすく、なっとくずくで説くというのが井上流なので、以上のことを理解したい人は、まずもって本書を紐解くべし。
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